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撮影からデザイン、印刷まで。知られざるボルボ・トラックのカタログ制作秘話
撮影からデザイン、印刷まで。知られざるボルボ・トラックのカタログ制作秘話

日本テレビのグループ会社として、日本テレビアート(以下、日テレアート)ではテレビ番組や映画などで使用する美術セットのデザインや照明ディレクション、また印刷物等の企画・デザイン等を行っています。
そんな中、テレビ関連の業務で培った技術やノウハウを積極的に外部企業へと提供するべく、 日テレアートでは2020年にビジネスプロデュース室が発足。現在は空間デザインやWeb、印刷物、またイベントに至るまで、様々な企業のデザインをプロデュースしています。

これまで日テレアートでは、スウェーデンに拠点を置く自動車メーカーであるボルボ・トラック様のカタログ制作、およびセレモニー等で使用する納車キー(レプリカキー)などの制作を担当させていただいております。

トラックを撮影すると言っても、一般的な物撮りとは違い、移動するのも簡単ではありません。また本国のカタログデザインに合わせるため、撮影だけでなく合成作業やレタッチなど、地道な作業が詰め込まれているカタログ制作。今回は本案件を担当したグラフィックデザイン部 山川にカタログ制作秘話を語ってもらいました。

「トラックの撮影は一般的な“物撮り”とは違う」スタジオの手配から撮影、印刷まですべての工程を担当

  • まずはじめに、日テレアートのグラフィックデザイン部がどういった部門なのか教えてください。

グラフィックデザイン部は主に日テレの宣伝活動に関わるグラフィックデザインを担当しています。 また、日テレグループ以外のクライアント様の案件も多数携わっており、紙からWebデザインまで、またCGや動画制作も行うなど幅広いアプローチに対応できるため、そうしたノウハウや技術をもとに様々な企業のデザイン制作を支援させていただいております。

実際に制作を担当したボルボ・トラック カタログ
  • ボルボ・トラックのカタログ制作を担当していますが、オーダーとしてはどのような内容だったのでしょうか?

ボルボはスウェーデンの自動車メーカーですので、本国のカタログで掲載されているトラックは当然ながら海外仕様となっています。 そのため、カタログテキストを日本語にすればいいというわけではなく、左ハンドルのものを右ハンドルの素材に変更するなど、本国のカタログをベースに日本仕様に合わせた内容につくり替えるというのがオーダーでした。

そして、単にカタログのデザインだけでなく、日本仕様のトラックの撮影からカタログの印刷までの全工程のディレクションおよび制作を担当します

撮影であれば撮影スタジオやカメラマンの手配から撮影カットの割り出し、香盤表作成、また撮影当日の現場ディレクションまで、そして印刷では工場で印刷立ち会いを行い、ボディカラーや内装など色味の最終調整を行うなど、最後まで責任を持って携わらせていただいています。

また、日テレアートはテレビ美術をやっている会社であるため、 “立体物もつくれる” と期待いただき、納車キー(レプリカキー)の制作も担当させていただきました。

実際に制作した納車キー
  • 様々な工程がある中で、どの工程が特に大変でしたか?

毎回、撮影するまでの準備が一番大変だと感じています。というのも、トラックという大きな商材の撮影は撮影できる場所も限られていますし、外装・内装を撮影するにあたって車種や撮影環境を変えながら多くのカットを撮影する必要があるのですが、そもそもトラックを移動させるのも簡単ではないので、すぐに商品の向きを変えたりできる一般的な商品の “物撮り” と環境や条件が異なるわけです。

そしてトラックを入れ替える時間やトラックの動線なども考える必要があり、また何度もトラックをお借りして撮影するとスタジオ代も人件費も増えてしまいますから、いかに効率よく1日で撮りきることができるかを考えなければなりません。

そのため、撮影当日はスムーズに進行できるように撮影資料と香盤表の作成が重要なポイントであり、撮りこぼしがないよう事前にクライアントとも入念に撮影カットの確認を進めていきました。

映り込みは撮影後に合成することも。意外と知られていない地道な作業が1冊のカタログに詰め込まれている。

  • あらためてカタログが完成するまでの具体的な制作プロセスを教えて下さい。

まずはクライアントから本国のカタログ原稿をいただき、そこから日本仕様のデザインおよびレイアウトを決めていきます。日本仕様と海外仕様で見せたいポイントが異なるため、ローカライズのために本国のカタログとは少し違ったレイアウトになります。

そして、ある程度レイアウトが決まった段階で、どういった撮影カットが必要かを割り出していくのですが、すべてを実際に撮影するのではなく、合成をベースに対応するものなど、どの方法がベストであるかを検討しながら撮影カットを洗い出していきます。

たとえば今回のカタログで言うと、実際に撮影したのはホワイトカラーのトラックでした。しかし、本国のカタログに合わせるために、レタッチでシルバーへと色を変えているのですが、カメラマンの方には車体に入り込む光を撮影時のライティングでうまく表現していただきました。さらに車体やフロントガラスへの映り込みは合成で対応しています。

もちろん撮影だけで再現できればいいのですが、本国のカタログと同じようなシチュエーションや雰囲気を再現することが物理的に難しいため、こうした合成やレタッチ、また撮影時のライティングなどのアプローチをすべてのカットに対して事前に決めておき、そのためにどういった撮影が必要であるかを洗い出していきました。

※日本仕様のカタログ用画像。実際はホワイトカラーのトラックで撮影
  • その他、トラックの撮影だからこそ大変なことは何かありましたか?

本国のカタログと合わせていくためには、カメラアングルも同じにしなければ違和感が生まれてしまいます。ただ、モノが大きいため、通常の撮影と違ってトラックよりも高い位置から撮影したりしなければならないんですね。

そこで事前にある程度予想をして、どれくらいの高さの足場を組みたいかをスタジオとも連携していくのですが、当日はカメラマンの方にも工夫いただきながら、理想のアングルで撮影をしていくというのが大変なポイントでした。

また、トラックのドライバー席を撮影しようにも、天井がある車体ですとそもそも撮影ができません。そのため、パーツだけ撮影して既存の素材に合成するなど、地道な作業が実はたくさんこのカタログには詰まっています

撮影時の様子
カタログ内装ページ。一部パーツは合成で対応
  • 印刷工程では、どういったポイントを意識されましたか?

カタログ制作の最終段階である印刷立ち会いも神経を使う工程です。たとえば同じボディカラーであっても、ページによってシチュエーションが異なり雰囲気が異なるため、実際は同じボディカラーにならないわけですが、そうした微妙なニュアンスの違いをしっかりと印刷時に表現できているかを確認していきます。気になるところがあればオペレーターの方と相談して色のバランスを調整していき、理想のイメージに近い色を再現していきました。

難しいと思われることであっても、部署を越えて社内のメンバーで解決策を模索していくのが日テレアートの強み

  • カタログ制作のプロジェクトで印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

クライアントからのリクエストで、ワンちゃんを助手席に座らせたカットを撮影しました。ただ、トラックは普通車よりも運転席の位置が高いため、抱えて座らせられるような高さではないんですね。
そこでワンちゃんが自ら助手席に歩いていけるよう階段をつくったり、助手席に座ったらタイミングを逃さずにすぐに撮影できるよう準備したりしたのですが、ワンちゃんが可愛くて。撮影で疲れていたみんなが癒やされていました。

クライアントの愛犬、パールちゃんがモデルとして活躍
  • 今回のプロジェクトの感想、そして今後の展望を教えて下さい。

ここまで大きなものを撮影する機会はなかなかありませんから、人物を撮影するときとはまた違った学びがたくさんありますし、毎回貴重な経験をさせていただいていると感じています。
(そもそもボルボ・トラックがとてもカッコイイので撮影が毎回楽しみです!)

日テレアート、特にグラフィックデザイン部は番組の宣伝関連のポスター制作をやっているといったイメージを持たれることも多いのですが、今回のようなカタログのデザインから撮影のコーディネートやディレクション、またWebからCGまでトータルでご相談いただける技術とチームがいます

難しいと感じることも、部署を越えて社内のメンバーで解決方法を探していくことができるのが日テレアートの強みだと思うので、こんなことできるのだろうかと思っても、まずは一度ご相談いただければ嬉しいです。


日テレアートではセットデザインはもちろん、グラフィック、CG、Web制作など総合的なクリエイティブ制作がご提案可能です。 お気軽にご相談ください。

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